どういうこと?
どういうことかと言ったら、つまり、いくら強大な自我を確立しても、人間は死ぬんです。
そのときに、キリスト教を信じてたら、一生懸命自我を確立して死ねば、最後の審判のときにそれはちゃんと評価されて、その人は復活して天国へ行くわけです。
そのことが西洋の自我の確立を支えていた。ところが、近代科学が発達してきてキリスト教があんまり信じられなくなってきた。
すると、復活はない、自分がこの世で必死に確立したものは、すべて消えてなくなってしまうということになる。そのことをどう考え、どう受け容れるかという、ものすごく難しい問題が出てきたわけです。
それと、その日その日の暮らしを支えるのが精一杯という時代には、「死とは何か」なんて考える暇もないわけでしょう。それが豊かな時代になって長生きするのが当たり前になってくると、やっぱり「死とは何か」に行き当たる。

ユング心理学では、意識の中心に「自我」があるのに対して、無意識をも含めたこころの全体の中心として「自己」というものを考えます。
「自我実現」は、意識の中心である「自我」の実現ですから、社会的に誰が見ても評価されることをやっている。
ところが「自己実現」の方は、無意識というわけのわからない要素も含めてのことですから、一般的に評価されることとは違う、場合によると途方もないことが起こってくる可能性がある。

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