心理学者ユング
「自己実現」というのは、スイスの心理学者のユングが考えたことです。
西洋では近代になってからは、人間は自我の確立が大事なんだということでやってきた。
日本もそれにならって「みんなとつながって」じゃなくて、西洋みたいな、ほかから独立した「自我」を確立することが大切だという考え方になってきた。
ところがそんなふうにかっちり自我を確立して生きていても、「中年の危機」と言われるように、中年になってから大きな不安がくることがわかってきた。
そして、その不安に立ち向かう仕事が、ユングの言う「自己実現」なんです。
一九三○年ごろ、こころの問題を抱えてユングのところへ相談に来た人たちの三分の一が、一見なんの問題もない人たち、地位も財産も名誉も全部持っている、自我を確立して成功した、恵まれた人たちだったんです。
「すべて持っていてこの世に完全に適応していることが、彼らの悩みなのだ」とユングは書いています。
あまりに恵まれてるから、次どうしたらいいかがわからなくなる。「自分はほんとうは何をしたいんだろう」「私は死んでどうなるのだろう」、そういう途方もないことを考えたり、実現しようとしたりするわけです。
つまり、このころの全体として、自分が死ぬことを含めて完全に納得すること、それが「自己実現」なのだ、とユングは言っています。
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